『デュシャン 運命のデザイン』刊行記念
タロット・デュシャン展 港千尋
2025/12/5(fri)〜14(sun)

2025 年 12月5日(金)~7日(日)/12日(金)~14日(日)6days [金]15:00ー20:00[土・日]12:00ー18:00 [休廊]月・火・水・木  ※両会場共通 『デュシャン 運命のデザイン』[港千尋 著、松田行正 造本、牛若丸 発行、Book&Design 発売]の刊行を記念し、本書にちなんだ写真、タロットカード、書籍、複製画などを展示いたします。 今年も蔵前iwao galleryと浅草Boo&Designの2箇所で同時開催(会期は共通)。蔵前では港千尋氏、浅草では松田行正氏がセレクトした作品が並ぶ予定です。会場ごとにコンセプトと展示物が異なりますので、詳細は以下をご参照ください。両会場で書籍を先行販売いたします。   主催:牛若丸/マツダオフィス https://matzda.co.jp
       iwao gallery https://iwaogallery.jp 
       Book&Design https://book-design.jp 【蔵前 iwao gallery】台東区蔵前 2-1-27 2F(最寄駅:蔵前駅) タロット・デュシャン展 
暗箱デュシャン[写真]港千尋 『デュシャン 運命のデザイン』の著者である港千尋が取材で訪れたミュンヘンをはじめ、デュシャンゆかりの場所の写真とともに、執筆の参考資料の一部として集めてきたアーティストによるタロットカード・オラクルカード、デザインも美しい研究書などを展示(協力:多摩美術大学アートとデザインの人類学研究所)。 【浅草 Book&Design】
台東区浅草 2-1-14 3F(最寄駅:浅草駅) フェイク・デュシャン展 
箱デュシャン[複製箱]松田行正 +1/4デュシャン[複製画]イシダツヨシ ミニチュアのデュシャン箱と、4分の1となったデュシャンの油絵などが展開する、迫力の「フェイク(複製)」デュシャン展。   アートの概念を大きく広げたマルセル・デュシャン。本書は、タロットカード22 枚のシンボルにデュシャンの作品を重ね、アート以外の側面からデュシャンを紹介。アーティスト、デザイナー、チェスプレーヤーとして活動したデュシャンの足跡を写真家、港千尋による文章と年表で解説します。著者によるタロット的解釈を試みた一冊です。造本は『ZERRO』で話題のデザイナー、松田行正が担当。 発行:牛若丸 発売:Book&Design ISBN:978-4-909718-15-0 C3070 定価:本体3,200円+税 仕様:四六判変型・コデックス装/288ページ(モノクロ) 著者:港 千尋 装幀:松田行正 印刷:三永印刷

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堀江ゆうこ写真展に寄せて
〝命の襞〟ブルーパールの新たな生
四方幸子

Blue Pearl :with respect and gratitude to Kosho Ito 堀江ゆうこ写真展に寄せて 「〝命の襞〟ブルーパールの新たな生」 四方幸子 ーーーーーーーーーーーーーーーー 人生を変えてしまう出会いというものがある。堀江ゆうこにとってそれは、《Blue Pearl(ブルーパール)》という作品だった。作者は伊藤公象。陶をメディウムに半世紀以上たえまない探究を続け、昨年92歳で逝去したアーティストである。 本展が開催され、私がこの原稿を書いているのは、まさしく堀江がこの作品と出会ったことによる。しかも堀江が写真家となったのは、《Blue Pearl》を撮りたいという強い衝動に駆られたからという。その思いを伊藤に伝え同意を得て《Blue Pearl》50個を購入、しかし当時カメラさえ持っていなかったという。 通常の手順を大きく逸脱したこの展開は、ひとえに堀江がブルーパールに魅せられたからだろう。いやむしろ《Blue Pearl》が彼女を見初めたのかもしれない。《Blue Pearl》は堀江を旅に誘い、堀江は《Blue Pearl》と共に各地に赴き、自然の中にそれらを配置し10年以上にわたり撮影を重ねた。《Blue Pearl》が堀江を選び、堀江はそれを喜んで受け入れたのだ。 その青色、襞状に織り込まれた形状、見る角度でさまざまな表情があり、周囲の光を受けてたえず変化し続ける。堀江が魅せられた《Blue Pearl》は、実際えもいわれぬ魅力を放っている。伊藤の手のひらから瞬時に生み出された形態は、一つひとつが異なる襞を形成し、光沢とともになんともなまめかしい。陶ではあるが、モノというより光を含めさまざまな波動を受けてたゆたう、むしろ現象的な存在である。色味も形状もそれぞれ異なる単体は、場所に応じて寄り添うかのように円形や流れるような不定形の群を形成する。襞が集まり全体でより複雑な襞を形成する様子は、自然にしばしば見られるフラクタル(自己相似形)構造を想起させる。そのためとりわけ屋外では、周囲の自然となだらかな関係を結びながら変容する現象性が際立つことになる。 《Blue Pearl》自体がそもそも、伊藤の意思が生み出したというより、伊藤がさまざまな波動を受け入れ身体化するなかで、それぞれ異なる形をおのずから形成したというべきか。活動初期から伊藤は、作品が発するエロスそして襞の持つ触覚性を重視してきた。作品はいわばエネルギーの凝縮体であり、触覚的な波動を放ちながら周囲と呼応することで存在する。単体もしくは群として環境とともに発されるエネルギー、それに感応する私たち……伊藤が「エロス」と呼んだものは、これら動的な関係性において立ち上がるものではなかったか。それはまた、地中から天空までを含む森羅万象と関係しているはずである。そしてそれは、人間や非人間それぞれが知覚可能なものに限らず、知覚の枠外にも至るだろう。 《Blue Pearl》は屋外で、変動する光や波動を受け止め反射し続ける襞であり現象でもある。ライプニッツやドゥルーズを参照するまでもなく、それは複雑に織り込まれた構造によって、さまざまなものを許容し吸収し、渦巻のような現象を生起させていく。 「私たち人間も動物や草木も同様に〝命の襞〟の海の中で生きているのではないか」。堀江は、伊藤の言葉〝命の襞〟を胸に撮影をするという。《Blue Pearl》を起点に森羅万象が繋がっていく中、その一期一会の豊穣の一部でありながら撮影者でもあるという境界領域の只中から、堀江は、シャッ…

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