『歌は待っている 風と土と「ひとひのうた」と』
​刊行記念イベント「夏のうたげ、東京」
​2025/8/16(sat),17(sun)

小金沢智編著『歌は待っている 風と土と「ひとひのうた」と』刊行記念イベント ​「夏のうたげ、東京」 会期:2025年8月16日(土)12時−20時、17日(日)11時−17時 観覧:無料[投げ銭制]/予約不要 —————————— 夏のうたげ、東京 ここ=iwao gallery(東京都台東区蔵前)は、磯辺加代子さんが2019年11月にオープンしたギャラリーです。その名称は、亡くなられたお父さまの名前「巖」(いわお)から。もともとは、創業97年、三代続く玩具問屋の倉庫だったと聞きます。 はじめて僕が訪れたのは、2022年2月、詩人の管啓次郎さんと写真家の吉江淳さんの展覧会のときでした。年末に父を亡くしたばかりの僕は、父の葬儀の1日を吉江さんに写していただいた写真集を制作中で、見本を持って展覧会の朗読会を訪ねたのでした。すると、磯辺さんは、僕が発表するつもりもなく私家版として制作していた写真集『flows』に興味を持たれ、よかったらここで写真集を見る機会をつくりませんかと提案してくださったのです。後日、「『flows』を見る/読む」と題して行った2022年8月19日、20日の企画は、イベント(トーク:小金沢智、平野篤史、吉江淳、ライブ:前野健太)も含め、僕にとって忘れ難い時間になりました。 あれから三年が経ち、iwao galleryで再びこのような機会をいただきました。「夏のうたげ、東京」は、僕が五月に発売した編著『歌は待っている 風と土と「ひとひのうた」と』(モ・クシュラ)の刊行記念イベントとして、「うたげ」をテーマに、展示、トーク、販売を行う場です。 東北芸術工科大学主催の「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2024」(蔵王温泉、東北芸術工科大学)で行った、周遊型展覧会「ひとひのうた」のドキュメントとして制作をはじめたこの本は、次第に、「うた」を大きな柱とする一冊になっていきました。そして、今回のイベントの名称に掲げている「うたげ」とは、詩人、評論家の大岡信の『うたげと孤心』(1978年)から。大岡は『うたげと孤心』で、優れた作品が生まれるためには、さまざまな分野の創作が同時に行われる「うたげ」の場と、作家の徹底的な「孤心」が必要なのだと述べています。僕は、この二重性に強く惹かれました。今回の機会は、本からの展開として、「うたげ」という場を僕なりにつくってみることにほかなりません。 空間には、吉江淳さんによる本の表紙に使わせていただいた写真《蔵王02》(2024年)、岡安賢一さん撮影・編集による「ひとひのうた」記録映像、出品作家の一人であった大和由佳さんの蔵王の土地の記憶にふれる作品《VINELAND -1/10,000模型》(2024年)の蔵前バージョン。そして、蔵王温泉の南無阿弥陀仏碑をモチーフに、岡澤慶秀さんの本書のための作字をともなった、岡本健+さんの表紙のデザインが(南無阿弥陀仏碑の原寸大で)皆さまをお迎えします。僕は、前野健太さん命名による「展覧歌」(てんらんか)の二作目として、この蔵前という場所のこと、ここで生きている人、生きていた人たちのことなどを想像しながら、「蔵前」をつくりました。そして、2日間、たくさんのゲストの皆さまと、僕がホストとなって、いろいろなお話をさせていただきます。ぜひ、お越しの方も、よろしかったら混ざってください。 初日は、生者と死者が再び出合う、お盆の最終日(8月16日)。流れゆく時間のいっときを、ここにいる皆さまと過ごすことができたらと思い、あちらとこちらのきわ——隅田川の気配を漂わせるiwao ga…

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描くこと、書くこと、掻くこと──ミヤケマイさんの仕事と制作における「傷」について
小金沢智

描くこと、書くこと、掻くこと ──ミヤケマイさんの仕事と制作における「傷」について 小金沢智 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 現在の美術が置かれている困難の一つに、主な鑑賞の場が美術館やギャラリーという、日中の決まった時間に開閉し、外部の空間から遮断され、常に同じ光や温湿度環境が求められているクローズドな場であることがある。その空間は、朝の光が差しこむこともなければ、夜の暗闇で満たされることもなく、花のにおいが薫ることもなければ、鳥の囀りが聞こえることもない。作品のため、きわめて人工的に整えられた空間は、私たちの生活にふつうに存在しているものを実態としても意識としても遠ざけ、そぎ落としていった。したがって、ジャンルは細分化し、成熟とは名ばかりの蛸壺化が進んだ結果、お互いの無干渉と無理解も起こっている。 詩人で評論家の大岡信(1931-2017)は、代表作のひとつ『うたげと孤心』(1978年)で、詩歌の創作の場においては「うたげ」の原理が強力に働いていたと論じている。たとえば、「平安朝の室内調度品である屏風を装飾するために、絵と和歌の間に「うたげ」が生じなければならなかった。その屏風を見ながら、ある人々はまた和歌を作り、ある人々は、屏風のある室内情景を絵巻に描いた。趣味の高さを競うさまざまの遊び──絵合、物合、草花合、貝合等々──も、同じ場から生い出て、「生活の芸術化」という無際限な要請を満たすべきものとなっていった」(「序にかえて」『うたげと孤心』)と。さらに続けて言うには、「つまり、日本の古典詩歌の世界では、文芸は文芸、生活は生活という二元論ではなく、文芸は生活、生活は文芸という一元論が、久しく原則を成していたということができるのではないか。(中略)この地点に立って見わたしてみると、文学、芸術、芸能その他の多様な現象が、この視野の中でならすっぽりおさまり、互いに照らし合いさえすることに気づいたのだった」(同前)。 非常に重要な指摘だと思う。さまざまな分野の創作が同じ場において行われること。『うたげと孤心』の骨子は、このような「うたげ」の場と原理に加え、優れた詩歌が生まれるためには作家の徹底的な「孤心」も同時になければならないということであったが、いま、私たちが日本において美術あるいは芸術と呼んでいるものがそもそもどういった状況から発生・成熟したのかということを考えるとき、この視点はおおきな手がかりを与えてくれると私は考えている。 美術家を名乗るミヤケマイさんの多岐の分野・領域に亘る仕事も、こうした認識をもってはじめて理解の一端に立つことができるのではないか。ミヤケさんが「2024年の私の作品として、最もおおきなもの」と私に語ったのは、2024年夏から自ら主宰し運営している「大人の寺小屋 余白」の現場である、滋賀県大津市の築120年の町家そのもの。空間全体に対する微に入り細を穿つ改修計画と、空間ごとの意匠設計、それらと自他の作品との調和は、一種の「うたげの場」とも言える新しい学び屋の創造に孤心するミヤケさんの姿を想像させて余りあるものだった。開講にあたり、「天」(宗教と美術)、「地」(食と環境)、「人」(人が作るもの)の三部構成を採用したミヤケさんは、かつて、「玉虫色の世界に無数にある落とし穴を避けて歩いていくには、生まれたての赤子の目と1000年の老木の知恵が必要となる」(『ミヤケマイ×華雪 ことばのかたち かたちのことば』図録、神奈川県民ホール、2022年3月)と述べていた。つまり、無垢な視覚と習熟した言語の両輪を世界認識の方法として持つ…

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Still water runs deep
ギャラリートーク 港千尋×ミヤケマイ
2025/7/9(wed)

2025年7月9日(水)
19:00ー20:30(終了予定)
←満席になりました(6/26) 港千尋[写真家・美術評論家]×ミヤケマイ 港千尋氏を迎えギャラリートークを開催いたします。本展で発表するミヤケマイの新作では、言葉によってつけられる〝傷〟について内包しております。作品制作にあたり、さまざな方々から、人生に欠損を与えたもしくは人生の方向性を決めたり影響した言葉を集めました。トークでは、この言葉について展開しお話しいただく予定です。 定員:20名(要予約) 参加費:無料 ※お申込受付は先着順とし、定員になり次第締め切りとさせていただきます。 ※配信等の予定はありません。 ※当日は休廊日のため、受付開始は18:30〜になります。 【ご予約・お問い合わせ】
メールにてご予約ください。
①お名前 ②お電話番号をご記入の上、件名「7/9ギャラリートーク」info@iwaogallery.jpまでお申し込みください。 ◉港千尋[Chihiro Minato] 1960年神奈川県生まれ。写真家・美術評論家。多摩美術大学情報デザイン学科教授。世界を移動しながら創作、研究、執筆、発表を続けている。国際展のキュレーションなども手がけ、ヴェネチア・ビエンナーレ日本館コミッショナー、あいちトリエンナーレ2016芸術監督(2016)、浪漫台3線国際芸術祭(台湾)国際キュレーター(2023)など。写真集に『瞬間の山』『文字の母たち』(いずれもインスクリプト)。『風景論』(中央公論新社、2019)、『現代色彩論講義──本当の色を求めて』(シリーズ〈感覚の道具箱〉1 MEI、2021)、『武満徹、世界の・札幌の』(シリーズ〈感覚の道具箱〉2 MEI、2022)、『ヒルマ・アフ・クリント──色彩のスピリチュアリティ』(インスクリプト、2025)他多数。 ◉ ミヤケマイ[Mai Miyake] 美術家。日本の伝統的な美術や工芸の繊細さや奥深さに独自の視点を加え、過去・現在・未来をシームレスにつなげながら、物事の本質や表現の普遍性を問う作品を制作。媒体を問わない表現方法を用いて骨董・工芸・現代美術・デザイン、文芸など、既存の狭苦しい区分を飛び越え、日本美術の文脈を独自の解釈と視点で伝統と革新の間を天衣無縫に往還。展覧会、ワークショップなど多数。「蝙蝠」(2017年)など4冊の作品集がある。2008年パリ国立高等美術大学校大学院に留学。京都芸術大学特任教授(2017〜2024年)。現在、大津にて「大人の寺小屋 余白」を主宰。 主な展覧会は、埼玉国際芸術祭(2020年)、神奈川県民ホールギャラリー「ことばのかたち かたちのことば」(2021年)、千葉市美術館「とある美術館の夏休み」(2022年)。個展では、GINZA SIX「ものがたりがはじまる Long Long Time Ago」、PGCD「ハクチョウの唄」、MtK「クロヤギシロヤギ通信展」、ギャラリー菜の花「春告」、柿傳ギャラリー「夢の跡」、しぶや黒田陶苑「神在」、壺中居「兆し」、ポーラ美術館「天は自らを助くるものを助ける」、メゾンエルメス「雨奇晴好」、水戸芸術館 現代美術ギャラリー「クリテリオム65」ほか多数。2018年~2020年「SHISEIDO THE STOREウィンドウギャラリー」、2020年「クロスフロンティア京都芸術大学美術工芸学科選抜展」、2023年10月〜「京都高島屋T8 THIS IS NATURE」、2024年5月「HANKYU ART FAIR 2024」のキュレーションを担当するなど幅広い活動を…

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Still water runs deep
川の流れのように|ミヤケマイ
2025/7/3(thu)〜20(sun)

2025年7月3日(木)ー20日(日)   [木・金・土]12:00ー19:00[日]12:00ー17:00 [休廊]月・火・水   ◉ private viewing: 7.2(水)15:00ー19:00 この度、iwao galleryにて「Still water runs deep|川の流れのように」ミヤケマイ個展を開催いたします。墨絵と箔といった日本画の伝統的な素材を中心としながら現代の生活の一部となる新作を展示いたします。 本展タイトルのようにiwao galleryの立地(隅田川沿い)から川縁の町が持ってるどこか留まらない、流れていく時間や感覚をモノクロの墨絵の世界観で表しています。寂寥感のある一瞬の優しさを汲み上げ、ミヤケの得意とする作品と場所の接点、そして土地と自分の接点を探すような作品です。 箔の作品では言葉によってつけられる〝傷〟について内包していきます。ここ数年、ミヤケマイは言葉によって肯定的にも否定的にも、傷つけられたり、力をもらったりすることで変容し、成形されていくことに対して興味を持っています。さまざまな人に人生に欠損を与えたもしくは人生の方向性を決めたり、影響した言葉を集め、良くも悪くも人は言葉によって形づけられる。そして、受け取る人間によって言葉の力は変化するということを表した作品を制作しています。あたかも、川の流れが作る中洲のように、水がいろいろなものを運んでくるように、どこからともなく現れ、形を作りまた通り過ぎてゆく人生のさまと作家は重ねています。是非、ご高覧ください。 ✴︎ gallery talk ✴︎ 7.9(水)19:00ー20:30 
←満席になりました(6/26) 港千尋[写真家・美術評論家]×ミヤケマイ ※ギャラリートーク(無料、要予約)の申込受付は6/25(水)よりHPにて告知いたします。 ※当日は休廊日のため、入場受付開始は18:30〜になります。 ◉ ミヤケマイ[Mai Miyake] 美術家。日本の伝統的な美術や工芸の繊細さや奥深さに独自の視点を加え、過去・現在・未来をシームレスにつなげながら、物事の本質や表現の普遍性を問う作品を制作。媒体を問わない表現方法を用いて骨董・工芸・現代美術・デザイン、文芸など、既存の狭苦しい区分を飛び越え、日本美術の文脈を独自の解釈と視点で伝統と革新の間を天衣無縫に往還。展覧会、ワークショップなど多数。「蝙蝠」(2017年)など4冊の作品集がある。2008年パリ国立高等美術大学校大学院に留学。京都芸術大学特任教授(2017〜2024年)。現在、大津にて「大人の寺小屋 余白」を主宰。 主な展覧会は、埼玉国際芸術祭(2020年)、神奈川県民ホールギャラリー「ことばのかたち かたちのことば」(2021年)、千葉市美術館「とある美術館の夏休み」(2022年)。個展では、GINZA SIX「ものがたりがはじまる Long Long Time Ago」、PGCD「ハクチョウの唄」、MtK「クロヤギシロヤギ通信展」、ギャラリー菜の花「春告」、柿傳ギャラリー「夢の跡」、しぶや黒田陶苑「神在」、壺中居「兆し」、ポーラ美術館「天は自らを助くるものを助ける」、メゾンエルメス「雨奇晴好」、水戸芸術館 現代美術ギャラリー「クリテリオム65」ほか多数。2018年~2020年「SHISEIDO THE STOREウィンドウギャラリー」、2020年「クロスフロンティア京都芸術大学美術工芸学科選抜展」、2023年10月〜「京都高島屋T8 THIS IS NATURE…

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LONDON DETAILS
藤田 修 展
2025/6/5(thu)〜22(sun)

LONDON DETAILS|藤田 修 展 2025年6月5日(木)ー22日(日)   [木・金・土]12:00ー19:00[日]12:00ー17:00 [休廊]月・火・水   本展「LONDON DETAILS」は、コロナ禍を経て7年ぶりに渡英しロンドンの街の断片を切り取った新作を軸に開催します。 藤田修は、感光性樹脂版を用いた新たな版画技法(フォトポリマー・グラヴュール)で注目されます。この技法は「写真では出しにくいインクによる物質感の強さ」と彼は言います。インクを版に詰め、1枚1枚紙にプレス機で刷って生まれる質感、物質性にこだわる、この〝物質化〟に重きを置いた強さこそが藤田の手から生み出される魅力です。SNSで流れくる画像を無意識に見ることとは異なり、肉眼でこそわかるイメージが浮き上がります。 また、カラーモノタイプの新作も同時発表。油彩でのモノタイプは、原点には油画を学んだ彼だからこその表現の幅であり、具体的なイメージはない実験的な躍動感を覚えます。 是非、この機会にご高覧ください。 ————— 時々シリーズものを作りたくなります。版画の話です。以前、横須賀美術館の企画に誘われ横須賀の街の断片12点を集め「YOKOSUKA DETAILS」と題して発表したことがあります。あれから12年、今回はロンドンの街の断片を切り取ったものから8点の新作を発表します。そして、展覧会のタイトルを「LONDON DETAILS」としました。すべて感光性樹脂版を使った凹版画で、それをフォトポリマー・グラヴュールと呼んでいます。 この技法で僕が目指すのは写真では出しにくいインクによる物質感の強さです。つまりイメージの物質化です。DMやモニターの画像では伝わりにくいので、ぜひギャラリーで見ていただけたら嬉しいです。 今回の展示では他に具体的なイメージを持たない心象風景のような油彩によるカラーモノタイプの新作9点も同時発表します。フォトポリマー・グラヴュールと同様にエッチングプレス機で紙にイメージを剥ぎ取ったものです。モノタイプなので一点モノ。他にもモノクロのモノタイプや版画集なども置く予定です。 2025.05 藤田修 ————— ◉ 藤田 修[Osamu Fujita] 1953年神奈川県生まれ。版画家。感光性樹脂版「フォトポリマー・グラヴュール」を用いた新たな版画技法で注目される。1979年多摩美術大学絵画科油画専攻卒業。1985年第2回カボ・フリオ国際版画ビエンナーレ名誉賞を受賞、1990年に第18回日本国際美術展でブリヂストン美術館賞受賞、1994年に第30回神奈川美術展で神奈川県立近代美術館賞を受賞、1995年第24回現代日本美術展横浜美術館賞受賞。パブリックコレクションは数多く、アーティゾン美術館、横浜市民ギャラリ-、国立国際美術館、和歌山県立近代美術館、神奈川県立近代美術館、横浜美術館、東京オペラシティ・アートギャラリー、山梨県立美術館。府中市美術館、横須賀美術館、町田市立国際版画美術館、他。個展、グループ展多数。 http://fujita-osamu.main.jp Instagram: @fujita_osamu LONDON DETAILS Osamu Fujita Solo Exhibition 2025.6.5(thu)-22(sun) Open:Thu-Sat 12:00-19:00 Sun 12:00-17:00 Close:Mon-Wed

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記憶のタナ
松岡 学 展
2025/5/8(thu)〜25(sun)

記憶のタナ|松岡 学 展 2025年5月8日(木)ー25日(日)   [木・金・土]12:00ー19:00[日]12:00ー17:00 [休廊]月・火・水   ————— 堤防の端から糸をだして、しばらく待つ。 釣れなければ、糸の長さや場所をかえてみる。 暗くなるまえになにか釣れたら、と思っていた。 ————— 松岡学は富山県の港町で生まれ育ち、釣りを趣味としている。タナとは釣り用語であり、魚が遊泳している層のことをいう。 松岡の絵は情報量がかなり少ない。意識的に削ぎ落としている構図によって、陰影が奥へと誘導され、筆跡のストロークが空気の動きや時間の流れを画面から感じ、景色が動き始める。「モチーフにどれだけ記憶が含まれているかを考える。自分が深く関わった場所を描くことで、新たに何かを思い出したり、個人的な象徴性のレイヤーがそこに表れたら良いと思う」と彼は言う。彼は記憶を探り、層を描き、そして、鑑賞者は時間の変化を感じ取る。瞼の裏に映るような記憶、情景が脳裏に焼きつく感覚がある。 本展の作品はすべて〝海景(seascape)〟で構成されている。松岡の描く海景は、小説の一文、映画のワンシーンのようでもある。絵の前で時間を忘れて佇んで欲しい。彼の記憶の原風景「記憶のタナ」を是非ご高覧ください。 ◉ 松岡 学[Gaku Matsuoka] 1988年富山県生まれ。2014年武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻日本画コース修了。創画会会友。2015年VOCA2015「現代美術の展望─新しい平面の作家たち」佳作賞(上野の森美術館)。2020年「Lyrical Songs」(Pragmata/東京)2021年公益財団法人吉野石膏美術振興財団「若手日本画家による展覧会助成」採択(アートスペース羅針盤/東京)2022年「松岡学 個展」(アートスペース88/国立)2023年「うつろうものと…かわらずに在るもの」(国登録有形文化財 豪農の館 内山邸、薬種商の館 金岡邸/富山)、「松岡 学 個展」(第一生命ギャラリー/有楽町)。個展、グループ展多数。 https://gakumatsuoka.jimdofree.com Instagram: @gaku.matsuoka Gaku Matsuoka Solo Exhibition 2025.5.8(thu)-25(sun) Open:Thu-Sat 12:00-19:00 Sun 12:00-17:00 Close:Mon-Wed

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PLANTS/BOTANICAL
三上晴子没後十周年展
2025/4/24(thu)〜27(sun)

PLANTS/BOTANICAL 三上晴子没後十周年展 2025年4月24日(木)〜27日(日) [木・金・土]12:00ー19:00 [日]12:00ー17:00 ※private viewing: 4/23(水)15:00-19:00 ※月・火・水 休廊 三上晴子(1961-2015)の急逝から10年になるのを機に、生前はほとんど公開されることのなかった1980年代の作品を中心に展示いたします。没後、自室から発見された手作りの鉄製花器や、額装されたボタニカル絵画も併せて公開。終生変わらなかったジャンクや植物への思いを振り返ります。 ◉三上晴子[Seiko MIKAMI] 1961年静岡県生まれ。2015年1月2日没。享年53歳。 1984年より「情報社会と身体」をテーマに、鉄クズやチップ、コンクリート片をはじめとする廃物を使ったジャンク・スカルプチュア制作(インスタレーション作品)やパフォーマンスなどの活動を始める。1985年サッポロ・ビール恵比寿工場の研究所廃墟にて《滅ビノ新造型》と題する個展を開催し、核戦争後の廃墟化した都市の姿を彷彿とさせる作品群が話題となる。これ以降、情報社会と身体(生体、免疫、情報戦争など)をテーマとした大規模なインスタレーション作品のシリーズを展開するようになる。 1990年代にはニューヨークに拠点を移し、自らコンピュータサイエンスを学んでベル研究所の研究員を務める傍ら、バイオロジーとインフォメーションを横断する新たな概念「Bio-Informatics」としてのメディアアート(人工知能、コンピュータウィルス、ネットワーク)を提唱。主に欧米のギャラリーや美術館で作品を展示した。 当時はまだほとんどなかった、観客参加型のインタラクティブ・アート作品を初めて発表したのは、1991年のP3 altanative museum,tokyoの《パルス・ビート〜あなたの脈拍を貸して下さい》。その後、「知覚によるインターフェイス」というテーマが基軸となり、観客の身体や知覚が介在するインタラクティブ作品を数多く発表していくようになる。 1995年にインターネットが一般化されると即座に表現メディアとして取組むようになり、視線入力による作品《Molecular Informatics》(キヤノン・アートラボ企画展 1996-07)、聴覚と身体内音による作品《World Membrane and the Dismembered Body》(NTTインターコミュニケーション[ICC]1997)、触覚による三次元認識の作品(NY 1998)、重力を第6の知覚と捉えた作品《gravicells―重力と抵抗》(市川創太との共作。山口情報芸術センター[YCAM]2004-10)、情報化社会における二重化された個人の存在と情報エージェントをテーマとした壮大な作品《Desire of Codes/欲望のコード》(山口情報芸術センター[YCAM]2010)、オープンソース化された最新の視線検出技術を利用した《Eye-Tacking Informatics-視線のモルフォロジー》(2011)などを発表。これらは世界各地のアートセンターやフェスティヴァルに繰り返し巡回展示された。 2015年に急死する直前まで、チューリッヒ工科大学との共同研究で、多数の超小型ドローンを制御する作品の実現を試みていた。 1961年生まれ 1991年よりニューヨークに拠点を移す 1995年ニューヨーク工科大学コンピュータサイエンス修士号 2000年帰国。以降、多摩美術大学にて教…

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the Seen and the Unseen
ギャラリートーク 中野正貴×伊賀美和子
2025/3/29(sat)

2025年3⽉29⽇(土)
←満席になりました(3/26) 
18:00ー19:30(終了予定) 中野正貴[写真家]×伊賀美和子 写真家・中野正貴氏を迎えギャラリートークを開催いたします。 定員:20名(要予約) 参加費:無料 ※お申込受付は先着順とし、定員になり次第締め切りとさせていただきます。 
※配信等の予定はありません。 【ご予約・お問い合わせ】
メールにてご予約ください。
①お名前 ②お電話番号をご記入の上、件名「3/29ギャラリートーク」info@iwaogallery.jpまでお申し込みください。 ◉中野正貴[Masataka Nakano] 写真家。1955年福岡県生まれ、翌56年より東京在住。武蔵野美術大学造形学部 視覚伝達デザイン学科卒業。写真家・秋元茂に師事、1980年独立。雑誌表紙、各種広告撮影で活躍。2000年無人の東京を撮影した写真集『TOKYO NOBODY』(リトルモア)で日本写真協会賞新人賞を受賞。2005年写真集『東京窓景』(河出書房新社)で第30回木村伊兵衛写真賞受賞。2008年写真集『MY LOST AMERICA』(リトルモア)で第8回さがみはら写真賞受賞。2021年第37回写真の町東川賞 飛彈野数右衛門賞受賞。2024年写真集『TOKYO EYE WALKING』(リトルモア)。2019年写真展「東京」(東京都写真美術館)、2024年写真展「Pathos」(キヤノンギャラリーS/東京)を開催。 ◉伊賀美和子[Miwako Iga] 美術家/写真家。1966年 東京都生まれ。1999年「キヤノン写真新世紀」優秀賞受賞。ミニチュア玩具や人形を登場人物として情景を描き出した写真作品を制作。近年、写真だけにとどまらず、造形、絵画、ドローイング、インスタレーションと活動の幅を広げている。2000年「A STORM IN THE LIFE ー台風一家ー」(セゾンアートプログラムギャラリー/東京)2003年「テンペスト・イン・ティーポット」(小出由紀子事務所/東京)2007年「Madame Cucumber」(ベイスギャラリー/東京)「Madame Cucumber」(イヒョン・ソウル・ギャラリー/ソウル)2010年「悲しき玩具〜The Open Secret」(ベイスギャラリー/東京)2015年「THAT’S NOT ENOUGH.」(ベイスギャラリー/東京)個展。作品集に『Madame Cucumber』(2007)がある。 https://madamecucumber.art

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the Seen and the Unseen
伊賀美和子展
2025/3/27(thu)〜4/13(sun)

the Seen and the Unseen ー秘密の遺物ー 伊賀美和子展 2025年3月27日(木)〜4月13日(日) [木・金・土]12:00ー19:00 [日]12:00ー17:00 ※月・火・水 休廊 ※3/29(土)ギャラリートークのため18:00で閉廊いたします。          ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ 見えるものと見えざるもの——発掘された遺物と記録された写真   これは真実か、それとも、時を超えて現れた物語か。          ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ 作家25周年を迎えた伊賀美和子は、10年ぶりになる東京での個展「the Seen and the Unseen ー秘密の遺物ー」を開催いたします。 伊賀は1999年キヤノン写真新世紀展での受賞以来、一貫して玩具、それも人形を主たる被写体に多彩な表現を展開してきた。そのなかで《マダム・キューカンバ》という自己投影をした小さな人形を主人公にした物語を写真で表現してきた。本展では、古代文明の発掘品として《マダム・キューカンバ》が登場する。 伊賀は、幼少時代から人形に魅了され、人形を通して人間の〝生命の本質〟や〝繋がり〟を表現しようと模索してきた。今まではプラスチックの素材を用い、過去と現在をつなぐシンボルとして《マダム・キューカンバ》を用いた人生の場面を、写真媒体を通して物語を作ってきた。しかし近年、「古代の人間はどのような祈りをこめて人形を作ったのだろうか?」という疑問を抱き続けていた。 過去と現在を繋ぎ、人々に再生の可能性を語りかけようとしている新作は、古代の人形が時を越えて新たな命を与えられたようでもある。物語の中で巡り巡る生命の循環を表現した《マダム・キューカンバ》シリーズは、こうして新たな一歩を踏み出したのである。かつての登場人物たちが、古代の姿にタイムスリップしたかのようである。2000年より続いた《マダム・キューカンバ》の地平線は、この時代に辿り着いた。「これは真実か、物語か」作家が生み出すナラティブ(物語性)な世界に引き込まれるでしょう。発見とは何か、歴史とは何か、美術とは何か、いろいろな疑問が浮かんで来るだろう。是非、ご高覧ください。 【追記】作品キャプションは、作品と作家のメモから AI が解説をしたものであり、AI との協奏(狂奏)もお楽しみください。 [プリント協力:キヤノン株式会社] ✴︎ gallery talk ✴︎ 3.29(土)18:00ー19:30 中野正貴[写真家]× 伊賀美和子 ※ギャラリートーク(無料、要予約)の申込受付は3/12(水)よりHPにて告知いたします。 ◉伊賀美和子[Miwako Iga] 美術家/写真家。1966年 東京都生まれ。1999年「キヤノン写真新世紀」優秀賞受賞。ミニチュア玩具や人形を登場人物として情景を描き出した写真作品を制作。近年、写真だけにとどまらず、造形、絵画、ドローイング、インスタレーションと活動の幅を広げている。2000年「A STORM IN THE LIFE ー台風一家ー」(セゾンアートプログラムギャラリー/東京)2003年「テンペスト・イン・ティーポット」(小出由紀子事務所/東京)2007年「Madame Cucumber」(ベイスギャラリー/東京)「Madame Cucumber」(イヒョン・ソウル・ギャラリー/ソウル)2…

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遠く霞む
羽田 誠
2025/2/27(thu)〜3/9(sun)

2025年2月27日(木)ー3月9日(日) [木・金・土]12:00ー19:00  [日]12:00ー17:00 ※月・火・水 休廊  誰もいない山の中、湿度を纏った空気が私を包む。 
目の前と遠くの境目がなくなり、その先が見えない。 
ゆっくりと夜が明ける。 
山際から昇る朝日が波のように放射され、 
微粒子の向こうに景色が浮かび上がる。 
霧や靄はやがて見えなくなり、空中に消えてゆく。 羽田誠は数年来、長野県北部に通い続けています。もともとは撮影の仕事で訪れた土地でしたが、そこに生じる光の作用に強く惹かれ、その後も取材とも旅ともつかない時間を重ねてきました。特に羽田の関心を引いたのは、標高のある盆地特有の、刻々と変化する霧や靄です。本展では、夜明けから早朝という昼にも夜にも属さない時間帯に、移ろいゆく光と空気の関係を捉えた作品を発表します。それは、村や高原が見せる現象を眼差した記録でもあります。 キュレーター:原 亜由美 協力: 木島平村/deeper Japan ◉羽田 誠 [Makoto Hada] 愛知県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。流行通信THE STUDIO入社後、浅川英郎に師事し、その後フリーランスとして活動。商業撮影のほか、精力的に作品集や展覧会を発表している。作品集『Baumkuchen』(2015)『THROUGH』(2017)『あのかどを曲がる頃』(2018)他。主な展覧会「THROUGH」(平和紙業ペーパーボイス 2017)「あのかどを曲がる頃」(knot gallery 2018)「far from」(Sony Imaging Gallery 2022)など。 https://makoto-hada.com/ ◉原 亜由美 [Ayumi Hara] 新潟県生まれ。キュレーター、コーディネーター。展覧会・作品集の企画、制作進行、編集などを手がける。 Makoto Hada Photo Exhibition 2025.2.27(thu)-3/9(sun) Open:Thu-Sat 12:00-19:00 Sun 12:00-17:00 Close:Mon-Wed

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